経済評論家の故山崎元さんが生前ユーチューブチャンネルのReHacQに出演していた。年明けにお亡くなりなったことを考えると、出演自体が自分の生き様を世間に観せようとしていたようにもみえる。番組のなかで、「投資について語るときは、希望と予想を分けて考えるべき」と語っていた。「来年、株上がりますかね~」というのは「希望」で、「予想」というのは、もっと現実的な裏付けのある見方だと言われていた。「常識で考えればわかるが、お金を預けると1年経つと1割とか2割増えて戻ってくることがわかっているならみんなそうするだろうし、そうしないのは下がるリスクもあるからだろう。しかし、まったくなにも言えないかと言えば、これから経済成長が見込まれる国の株を分散して、長期で少しづつ買って行けば、株が上がっても下がっても平均されるから長い期間で見れば上がると言うようなことは言えるのかもしれない。」これが「予想」だと話されていた。
この話に付け加えて、自分のことについても、「希望」と「予想」を分けて考えるようにしているとも話されている。「希望」として、もっと長生きして移り行く世の中をもっと見ていたいと考えたりもする。しかし、「予想」として、それが難しいのであれば、限られた時間の一日一日を大切に生きたいとも考える。今日は体調がよいということに幸福を感じるような時間の過ごし方をしたい。体調が悪いのを押してでもReHacQに出演して、自分の想いを多くの人に伝えたい。
以前、現在の日本にはいろいろなケースで「日常生活とギャップのある現実」が存在すことを書いた。個人は「インチキな社会」に身構える一方で、他者とコンセンサスを取り信頼関係を築くために自らの「真摯さ」を問うことが求められる。どうしたら「真摯」になれるのか?その手段が、「希望と予想を区別して考え、自らが認識できる「現実」において予想を語ること」なのである。そして、予想を語るには、「どっちつかず」プリンの思考でも仮説思考でも、「現実」が認識できるまで諦めずに冷静に考え続けることが必要になる。多くの人が予想できることは自分の身の周りの「現実」に限定されるのかもしれない。山崎さんは死ぬまで、経済評論家として真摯であろうとした。
糸井重里さんに興味をもち、糸井さんを心の師と仰ぐオリエンタルラジオの中田敦彦さんが糸井さんにインタビューするユーチューブを観た。
広告とは、お客様に商品を買ってもらうために商品の価値を消費者に伝えることである。
商品の価値は3つの視点から伝える。
1、機能・特徴
機能・・・商品が本来備えている働きのこと
特徴・・・他と比べて優れている点のこと
2、結果・・・機能、特徴がお客様にもたらす結果のこと
→お客様ができるようになること
3、感情・・・お客様が不快な状態から快な状態へ
移動することで得られる感情ということ
「感情を売る」とはどういうことなのか? その答えは
「お客様の心に響くシーンを描写する」ということ
ジャパネットたかたのテレビコマーシャルを例にすると、商品の「機能・特徴」がパネルに示された図を使って説明され「結果」は案内役の人が商品を使って感想を述べたりする。「感情」を売るために商品を快適に使用している人の映像が流れる。最後に、支払いも分割OKで手数料、金利ジャパネット負担であることが示され、ここでも買うことに対するハードルが下がる仕掛けになっている。商品のコピーや短い時間のテレビコマーシャルでは、物理的な制約なかで、一部だけを際立たせる場合もあるのかもしれない。
糸井さんは40代の頃に釣りにハマった時期があり、「上からでも下からでもなく自分が冷静に考えてあるものはある」という指針を得たそうである。この指針は釣りについて語られているのだが、仕事にも当てはまるように感じた。糸井さんが仕事のアイデアを考え続けていると多くの場合、消費者のニーズや商品の価値が手に取るようにわかる瞬間が來るのだと思う。しかし、この頃は糸井さんにとって仕事に対する自信とは裏腹に周囲との軋轢が増えた時期でもあった。制約が多い仕事が増えるなかで糸井さんは、周囲の雑音には動じずに自分のアイデアを信じて商品を提供していく糸井さん流の仕事のやり方を探し続けた。その後の糸井さんは、コピーライターの仕事を離れてゲームや手帳などのモノを作る仕事に携わるようになった。又ほぼ日刊イトイ新聞という糸井さんの会社のホームページに20年以上ほぼ毎日、エッセイのようなものを書き続けている。ほぼ日刊イトイ新聞という会社は現在、株式上場するような大きな会社に成長している。
中田敦彦さんの仕事も10分の1くらいでいいという話も面白かった。他の人でも作れるような番組をたくさん作ることは生産性のあるクリエイティブな仕事ではない。その時間を使ってあれこれ物事を深く掘り下げて考え続けるなかで、あまり触れられることのない視聴者のイシューに気づき、中田さんが突き止めた真実を語れるようになると番組のもつ価値も全然違ったものになるのではないかということだろうか。コピーライターである糸井さんはいろいろな人と対談されるが、糸井さんが会話に出て来るエピソードを一つ一つ丁寧に「糸井さんの言葉」に置き換えてあるあるの話にされるのが印象に残る。糸井さんの視線は消費者の感情にも向けられているので「フワトロ」や「シュワシュワ」などの擬音も飛び出す。糸井さんは「どっちつかず」の思考を続けながら、上からでも下からでもなく自分が冷静に考えてあるものはあるのあるを絶えず確認しているようにみえる。
人は、動物のように(外部の)刺激に対して直接反応するのではなく、自覚、想像力、良心、自由意志という独特な性質をもち「自分の反応」を選択する自由もつ。自覚とは自分自身を客観的に見つめる力である。想像力とは現在の状況を超えて頭の中で想像する力である。良心とは人間の心の奥底で善と悪を区別し、正しい原則を知り、今の思いや行動はどれだけ原則と調和しているかをわきまえる意識または能力である。自由意志とはほかのあらゆる影響に縛られることなく自覚に基づいて行動する能力のことである。英語のレスポンシビリティ(責任)の語源はレスポンス(反応)とアビリティ(能力)という二つの言葉からなる。繋げると「自分の反応を選択する能力」である。「自分の反応」を選択できる人は、「自分の反応」を選択した結果についても進んで受け入れようとする。このような態度を取る人には、結果に対する「責任感」も生まれている。この事実は、理性を働かせている人とはどんな人なのかを教えてくれる。