自分との対話について

 テレビなどで見られるタレント同士のしゃべり、落語、芝居、映画、漫才など、ジャンルは異なれど会話形式になることが多い。読書も受動的にならず、本と会話するように読むべきだという主張もある。

 芝居の場合、演者のやりとりが大袈裟だったり、現実離れした設定であることに敬遠する人もいる。しかし、このような極端な内容や演出も、映画などをたくさん観るようになって、人間の内面の葛藤をテーマにした「表現」の一種なのかなと少し達観した眼で観ることができるようになった。

 このことは、歌舞伎、落語、能、狂言などの古典芸能や詩についても同様なことが言える。

 私たちはこのような媒体を、普段の生活から離れて息抜きがしたいと思って観ることが多いが、一方で、そのことについて考えたり、「自分との対話」をしている時もある。

 自分の場合で言えば、このような媒体を観て映像というよりは演者のセリフや音楽が印象に残る。昔は歌詞にはほとんど興味がなかったが、最近は歌詞が素敵な曲もいいなと思うようになった。

 普段の生活のなかで、「自分との対話」をしている時間は思っているよりも少ない。仕事をしている時間は、自分のことをあまり考えていないという人も多いのではないか。自分にとってこのような媒体を観ることは、有意義な時間でありこころを豊かにしてくれるものになっている。