3年前、きみたちは、真実から逃げなければ、お父さんは命を落とすこともなかったんだ。
きみはずっとお父さんのことを避け続けていたよな。
でもね。お父さんは(辞めた理由)
きみが水泳を辞めたときも、きみのメールをみつけたときも
そして、きみの過ちに気づいたときも、きっといつもきみと向き合おうとしていたはずだ。
きみはその時お父さんと話をしようとしたか?
きみがちゃんと向き合っていれば、お父さんは杉野くんに話を聞こうとは思わなかった。
なぜ、お父さんが重傷を追いながら、救急車も呼ばず、助けも求めず、あの麒麟像まで辿り着いたか?このブログを見ていたきみならもうわかるよね。麒麟の翼の本当の意味を。
水天宮にお参りした帰り、あの麒麟をみつけたんです。
あの翼に、ここから日本中に羽ばたいていけるようにって意味があることを知って、私勇気をもらったんです。麒麟の翼はきっと、勇気の翼なんだって。
その勇気を、きみと向き合う勇気を持てなかったことを、お父さんはずっと悔やんでいた。そのせいで杉野くんを追いつめてしまったことも。
お父さんは、なんとしても、あの麒麟像まで辿り着きたかったんだ。
吉永くんに、息子がしてしまったことを償うために。
そして、きみに最後のメッセージを伝えるために。
勇気をもて。
真実から逃げるな。
自分が正しいと信じたことをやれ。
引用: 映画 麒麟の翼 ~劇場版・新参者~
ナイフで刺された青柳武明(中井貴一)が日本橋の麒麟像まで歩くところから映画が始まる。青柳武明(中井貴一)は日本橋の麒麟像の前で死んでしまう。場面が切り変って、八島冬樹(三浦雄大)という青年が公園で警察官に職務質問されてる最中に逃げ出す。そして道路に飛び出しトラックにひかれて死んでしまう。八島冬樹(三浦雄大)が青柳武明(中井貴一)のカバンを所持しているのである。
青柳武明(中井貴一)を殺した犯人として八島冬樹(三浦雄大)が疑われるが、犯人は以外な人物青柳武明(中井貴一)の息子悠人(松坂桃李)の中学校の頃の水泳部の友達杉野達也(山崎賢人)であることが判明する。
お父さん(中井貴一)は息子悠人(松坂桃李)がなぜ水泳部を辞めてしまったのか?気にかけていた。そして、ある日、息子悠人(松坂桃李)がキリンノツバサというブログを見ていることに気づく。そのブログは、息子の中学校の水泳部の友達吉永友之(菅田将暉)の母親が運営しているブログだった。吉永くんは練習中の事故により命は取り留めたが意識がもどらない状態が続いていた。同じ水泳部の杉野くんからなにか話を聞けるのではないか?と考え、お父さん(中井貴一)の方から連絡して話を聞く機会をもつ。そして、帰り道、杉野くんに包丁で刺されてしまうのである。
リレーの試合でフライングをしてしまった吉永くんを特訓だと言って水泳部の残りの3人がケガをさせてしまったことがもともとの原因だった。そのことを水泳部の顧問糸川肇(劇団ひとり)が警察にも水泳部の生徒3人とは関係なく吉永くんが自主的に練習している際の事故だったと報告してしまったことがその後の殺人とも繋がってしまう。
そこで、刑事の加賀恭一郎(阿部寛)が現実と向き合おうとしなかった息子悠人(松坂桃李)に話したのが上のセリフである。
勇気のある行動にたまに出会う。親だったり、学校の先生だったり、上司だったり、こちらが尻込みをしている時に以外な人物が名乗りを上げたり、様々である。しかしひとつ言えることはいつも勇敢な人は居ないということである。そんなことをいつもしていたら身が持たないことを大人になると経験として知るからである。
この話の中で、お父さん(中井貴一)がわざわざ杉野くんに会いに行ったのは息子悠人(松坂桃李)への愛情だろう。自分を騙すことはできない。どんな困難な状況でも、現実と向き合いなさいということを伝えたかったのではないだろうか?愚直に正しいと思えることをやりなさいということではないだろうか?映画の最後の方で、お父さん(中井貴一)がキリンノツバサのブログに投稿していた千羽鶴の投稿を引き継ぎ、息子の悠人(松坂桃李)が白の千羽鶴を投稿している。
この映画では、青柳家の家族の話だけでなく、八島冬樹(三浦雄大)と中原香織(新垣結衣)のカップル、吉永くんとお母さん、水泳部の友達と先生についても丁寧に描いている。
八島冬樹(三浦雄大)は家具職人として生計を立てることを望むが経験がないことを理由に採用されない。中原香織(新垣結衣)は、八島冬樹(三浦雄大)が死んだあと故郷に戻って子供を産むことを決意する。吉永くんは意識がもどらないままかもしれない。「先の見えない現実」を感じさせる。そんな中でも、現実と向き合い、自分を誤魔化さず生きることで、いつか幸せな日が訪れることを願っている。
この映画は、勇気と祈りの物語である。